クレイジーデイジー~青森・武富士弘前支店放火事件~

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夫の告白

「今までずっと騙してたの?仕事行くふりして、弁当持って出かけてたの?」
男は、はらはらと涙を流す妻の質問に答えられずにいた。
男は妻から競輪や、それにつぎ込むための借金をやめるよう再三懇願されていたにもかかわらず、妻に嘘をつき続けて借金を重ねていた。
その額、三〇〇万円。

二人して実家の母に借金を申し込んだ。
母は悲しそうな顔をして、それでも八〇万円を用立ててくれたという。
しかし、母はこう付け加えた。

「これ以上くるなら、もう親でも子でもないよ」

年老いた母からの、厳しくも間違いのない愛の鞭だったが、男はその言葉を真剣に受け止めることができなかった。

平成一三日。
男はかねてより目をつけていた消費者金融の扉を開けた。

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🔓母の名は、女~山形・村山市6歳男児殺害死体遺棄事件~

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拘置所にて

「私、今でも夢を見るの。男の人と連れ子と4人で仲良く暮らしていて。でも、男の人の顔はないの。」

女は拘置先の刑務所で、面会に来た知人にこう話した。
家族で楽しく幸せに暮らすことが夢だった。自分に子供がいるから、相手にも子供がいればいいな、女はそう思ってまさにその通りの男と巡り会った。

しかし家族になろうとしたひと月後、女は月灯りに照らされながらスギ林の中で我が子の墓穴を掘っていた

加藤翔くん(当時6歳)。母親とその同棲相手の男から凄惨な暴行を受け、死亡。母親の手によって、鬱蒼としたスギ林に埋められた。
最初に発見された遺体は、わずかに髪の毛が残った頭部だった。

事件概要

平成15年9月18日、山形県警村山署の捜査員は茨城県土浦市にいた。
この町に、捜索願が出されている女性がどうやら潜伏しているという情報を得て、勤務先とみられる風俗店に踏み込んだ。
捜査員を見た女性は一瞬怯んだように見えたが、やがて観念したのか捜査員の聴取に応じた。
捜査員らは、女性にどうしても聞かなければならないことがあった。この女性の、6歳になる息子の行方である。
息子には、投薬が必要な先天性の腎臓病があった。その息子の行方が、わからなくなっていたのだ。

「子供はどうしたの?」
捜査員に対し、当初は友達に預けている、と話した女性だったが、嘘をついてはいけないと捜査員に諭されると、
「死んじゃいました、山の中に埋めた。」
と答えた。
山に埋めた、と聞いた捜査員が思わず、「なんで!」と聞き返すと、女性は大声でこう言い返し、その場に泣き崩れた。
「だって!死んじゃったんだもん!!」

この日、山形県警村山署は、秋田県由利町(現・由利本荘市)出身で風俗店従業員の加藤有美(当時25歳)を、保護責任者遺棄容疑で逮捕した。
有美はその年の6月上旬、長男の翔くんを山形県内の山中に置き去りにした容疑が持たれていた。
有美の供述には不確かな部分もあり、翔くんが死んだから遺棄したのか、それとも置き去りにしただけなのかもよくわかっていなかった。
有美の話によれば、衰弱した翔くんを離婚した前夫に託そうと決め秋田県内へ向かっていたが、その途中で翔くんを置き去りにした、と話す一方で、死亡したため山形県内の山林に埋めたとも話していたのだ。

9月19日以降、供述をもとに村山市本飯田にある通称「勝福山」の林道で警察犬も投入して捜索するも、手掛かりになるものさえ発見できなかった。
警察では、有美が前夫に翔くんを預けるつもりだったと言いながら、前夫とは2年間音信不通だったことや、翔くんを埋めたスコップを購入した場所や処分した場所を覚えていない点を不審に思い、慎重に捜査を進めていたところ、10月に入って供述が嘘だったことが判明。
実際には、当時住んでいた村山市内の交際男性のアパートで翔くんが死亡していたことが分かった。
その後、証拠隠滅を図るために有美が翔くんを山に埋めていたのだ。

有美は翔くんを日常的にせっかんしていたといい、その延長上で翔くんは死亡したとみられた。
有美自身も、警察に対し「発育の遅れに苛立ち、せっかんしていた」とも供述していた。
また、当時住んでいたアパートの主で、有美の交際相手だった男性も、「翔くんは友達のところにいると聞いていた」と話し、さらに、腎臓病のため水分を多くとる必要があったと聞いていたのに、有美がおねしょを嫌がって水分を与えていなかったため、その男性が食事や水分を与えていたと話した。

有美は「翔くんの口をふさいで殺害した」とも話していたことから、警察では傷害容疑での再逮捕も視野に入れ、いまだ発見に至らない翔くんを捜していた。

10月8日。逮捕から20日が過ぎたこの日、捜索していた場所から子供のものと思われる頭部が発見された。
遺体は林道から100mほど分け入ったところの地中1mに埋められていた。膝を両手で抱え込むようにし、赤いシャツに黒のズボンで、傍には防臭剤が置かれていたという。

有美と翔くんの様子を知る住民は、こう話していた。
「暴力などは見たことはないが、しつけは厳しかった。きつい調子で叱りつけることはあったし、翔くんがじっと有美さんの顔色を窺っている感じもありました。母子家庭だからと力んでしまったのでしょうか・・・」
しかし一方で、翔くんが通っていた保育園の関係者らは一様に驚きを隠せないでいた。
有美は翔くんの体を思い、塩分を控えめにしなければならない翔くんの食事のメニューを工夫し、翔くんが熱を出したというと飛んで迎えに来るような母親だったという。
勤め先にも翔くんをよく連れてきており、実家との関係も良好で、秋田県内の有美の実家には、翔くんのおもちゃが庭先にも置いてあった。

しかし有美は、秋田で暮らしていたころからせっかんを繰り返していたと供述。一貫して自分が虐待を加え、結果死なせて埋めたと話していた。

ところがこの10月8日になって、事態は急変した。
警察が任意で事情を聞いていた、有美の交際相手の男性が自殺を図ったのだ。幸い、命に別状はなかったが、男性は救急搬送された。
実は有美の供述から、男性の関与が疑われていたのだ。
有美は一貫して自分一人が行ったという趣旨の供述をしていたが、翔くんが死亡した後、1~2日経ってから遺棄したと話していた。
とすれば、その間翔くんの遺体はどこにあったのか?当時有美は村山市内の交際相手の男性が借りていたアパートで暮らしており、男性もその期間その部屋にいたことが分かっていた。
何も知らないと話していた男性の関与について調べ始めた矢先の自殺未遂。

結果から言うと、男はすべて知っていた。というより、この男こそが、翔くんを死亡させた張本人であった。

【有料部分 目次】

母子のそれまで
変わり果てた「かー」
我が子の墓穴
葛藤
男との約束
「なんで減らしたんですか!!」
「母として仇をとってやりたい」
初の懲役10年以上
昨日まで一緒に泥棒してたんでしょう?
最期の言葉

ここからは有料記事です

🔓護られたかった人~小牧市・同居女性殺害事件~

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平成18年8月17日

名古屋高裁でこの日、とある殺人事件の控訴審判決が言い渡された。
被告人は、原田芳文(仮名/当時39歳)。平成16年に小牧市内で同居していた女性を殺害、遺棄した疑いで逮捕起訴されていた。
半年前の28日に下された一審判決は、懲役12年。求刑が15年であったことからも、妥当な線に思えた。
しかし、この日名古屋高裁の前原捷一郎裁判長は、原判決を破棄、懲役10年を言い渡した。
さらに減刑となった理由は、殺人が起こるその過程に注目したうえで、一審判決はそれを十分に考慮していない、というものだった。

男が殺人を犯した理由は、なんだったのか。

事件概要

愛知県小牧市新町2丁目のとあるアパートの駐車場に停めてあったトラックの箱の中から、毛布にくるまれた遺体が発見された。
そのトラックは、思えば長いことそこに放置してあった。運転席や助手席には書類や新聞紙、ゴミなどが山積みの状態で、使用されている形跡もうかがえない。
トラックは愛知県内の食料品加工会社のもののようだったが、その会社はすでに倒産していた。一度、トラックの周辺で異臭騒ぎがあり、アパートを管理している会社が来て調べたことがあったが、その時は運転席をのぞき込んだりする程度で箱を開けてはいなかった。

夏の暑さが本格的になった平成16731日。不審に思った住民女性が、思い切ってそのトラックの観音を開けた。
もともと食品を運んでいたトラックだから、ニオイはした。
しかし箱の中には明らかにそぐわない、布団のような、毛布のようなものが見えた。そして、その布団から、人の手らしきものがはみ出ていたのだ。

通報を受けた小牧署員が確認したところ、そこには白骨化した遺体があった。その後の調べで、遺体は女性、年齢30歳から50歳くらいの成人で、身長約160センチ、髪は茶髪で肩くらいまで、と発表される。
服装は紺色のジーンズに、上半身は下着姿。足元には枕と靴があったという。

すぐさまこのトラックを使用している人物の特定がなされ、そのアパートに住む食品製造会社勤務の男性と判明。
名古屋ナンバーのそのトラックは保冷車で、平成16年の1月頃からそのスペースに停められていたという。
警察が男性に話を聞いたところ、確かにそのトラックを使っていたのはその男性だったが、給料未払いの代わりに会社が男性に譲渡したものだということがわかった。
男性は現在別の食品会社で働いており、通勤にそのトラックを使っていたものの、故障したため3月以降放置していたという。箱を開けたのは、昨年末が最後だった。

警察は当然、この実質の所有者の男性に話を聞くことになる。しかし男性は遺体に関して全く知らないと主張。警察は男性の部屋のほかに、トラックが止められていた場所に一番近い部屋も捜索していたが、そもそも遺体の状況もよくわからなかった。
司法解剖で死因は特定されておらず、遺体もほとんど白骨化しており、いまだ身元も不明だった。
遺体は箱の真ん中より後方にあったが、敷布団と掛布団、それに枕、靴まであった。
箱は外から簡単に開けることができるため、たとえば浮浪者などがこっそり入り込み、それを知らない所有者もしくは第三者が観音を閉めてしまった、そういう可能性もあった。
しかし、箱の中や観音の内側に出ようとした形跡がないことから、やはり女性は殺害されこの場所に遺棄されたと断定、84日には遺体の身元が近くに住んでいた35歳の女性であることも判明した。

女性の交友関係などから、女性が行方不明になった際に同居していた原田が浮上、警察が事情を聞いたところ、5月に女性を殺害してこのトラックの箱の中に遺棄したことを認めた。

しかし、同時に驚愕の事実が判明する。
女性には13歳の息子がおり、事件当時は原田と3人での生活だった。そして、警察がその息子にも事情を聞いたところ、なんと「遺体を運ぶのを手伝った」と話したのだ。

【有料部分 目次】
3人の38日間

母親の「癖」
息子の心
振り回される人々
原田の過去
「私霊感が強いの」
壮絶な母
守れなかった制服
本当は、護られたかった人

絶対私は悪くない~福井県あわら市・義母逆恨み殺害事件①~

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平成14年8月21日

福井県芦原町(現・あわら市)。
この日、いつもは早起きの祖母が起きてこないことを気にかけた孫は、祖母が生活する離れに向かった。
納屋に隣接する離れの入り口は施錠されておらず、孫は祖母を起こしに部屋へ入った。

「ばあちゃん…」

最初は単に布団がはがれているだけかと思った。しかし、あおむけの祖母の顔に、すでに生気はなかった。 続きを読む 絶対私は悪くない~福井県あわら市・義母逆恨み殺害事件①~

絶対私は悪くない~福井県あわら市・義母逆恨み殺害事件②~

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救いようのない女

夫や子供たちが暮らす家に戻ることができた満智子だったが、気に入らないことがあればそれはすべて周りに問題があるからだと決めつけ、あからさまに不満を嫌がらせという形でぶつけていた。

たとえば、食事の際に長女と久栄さんが仲良く話していれば、「娘を取られる!」と憤慨し、夫が高齢の母を気遣えば、自分をのけ者にしているとして機嫌を悪くしていた。
満智子は15年で何も学んでおらず、久栄さんに対して目の前で強くドアを閉めたり、久栄さんの食器をわざと荒々しく扱うなど、それは誰の目から見てもひどいものだったという。

それを見た賢さんと長男は、すぐさま満智子に強い態度で臨んだ。特に、長男は母親である満智子に対し、厳しい態度を崩さなかった。
久栄さんは満智子の機嫌を損ねないように、なるべく母屋へは顔を出さず、離れの自室で一人過ごすようになる。それを気にして、長男が離れへ行って久栄さんを気遣うことも、満智子は我慢ならなかった。
久栄さんは自分用の小型冷蔵庫を買い、さらには母屋の電話を使わないでいいように携帯電話まで購入した。とにかく、満智子の気に障らないようにするには、自分だけが顔を見せなければいい、そんな思いで心を痛めていた。

また、長男が久栄さんを庇って満智子に強い口調で迫った際には、
「母親になんてことを言うんだ、そんなことを言ってはいけない」
と、長男をたしなめ、満智子の肩を持つなどしていた。

しかし、そんなことで変わるほど満智子はやわではなかったのだ。

このころすでに夫の賢さんは満智子にほとほと嫌気がさしており、ほとんどかかわらない、口も利かないような状況になっていた。代わりに長男が満智子を諫め、時には激しくなじり、そのたびに久栄さんはハラハラしながら成り行きを見守るしかなかった。

せっかく帰ってきたのに、夫も息子たちも誰も私をいたわろうとしない。どうしてこんなに薄情な子供たちなんだろう。

自分を省みることを一切しない満智子には、子供や夫の態度の原因がどこにあるのか、全くわかっていなかった。
そのため、自分以外の家族が久栄さんを気遣うことに勝手に嫉妬心を燃やし、何度も何度も久栄さんに嫌がらせを繰り返した。
そればかりか、「すべて自分以外の誰かが悪い」と思うたちの満智子は、母親代わりだった久栄さんの教育が悪かったから、こんな風になったのだと結論付けてしまう。

満智子の久栄さんへの嫉妬心は、すでに憎悪の焔に変わっていた。

名案

平成14年8月19日、満智子は庭先で長男に叱りつけられた。
近藤家では犬を飼っていたが、家族内でドッグフード以外の食べ物を与えない、というルールがあった。
にもかかわらず、満智子は勝手に人間の食べ物を与えていたため、長男はことあるごとにそれをやめるよう言ってきていた。
この日、満智子は禁止されているのにまた犬に人間の食べ物を与えようとしたところを長男に見つかってしまい、素直に謝ることもできないため、
「私が食べようとしただけや!」
とわけのわからない言い訳をかましてしまう。これに激怒した長男は、思わず満智子の腰や足を蹴った。そして、満智子を旧姓の「南さん」と呼び、満智子は近藤家にいらないのだと明確に告げられた。

他罰的な人ほど、自分がされたことをことさら強調するのはよくある話だが、満智子の場合もそうだった。
長男に絶縁ともとれる発言を受けたとショックを受け、深く深く傷ついたという。しかしこれもすべて、久栄さんの育て方が悪いせいであり、久栄さんが満智子のあることないことを子供たちに聞かせて育てたのだと思い込むことで、悪いのは自分じゃないと考えた。

翌日にも再度、長男から出て行けと言われた満智子は、賢さんと久栄さんとで夕食をとっているとき、久栄さんに嫌がらせをすることで自分の気持ちを伝えようという、ちょっと理解できない行動に出る。
賢さんが席を立った隙に、満智子は久栄さんにふきんを叩きつけ、さらには足元に落ちていた豆の皮を見つけて久栄さんがこぼした、汚いなどと難癖をつけ非難し始めた。
黙って耐えるしかなかった久栄さんの様子がおかしいことに気付いた長男が久栄さんに問いただし、夕食時の出来事を知るところとなり、我慢の限界を超えていた長男は満智子に対し、
「おめーはうちにはいらん。出て行ってしまえ。死んでしまえ。」
と怒鳴った。

満智子は被害者ぶって賢さんに愚痴をこぼしたというが、賢さんも全く相手にしなかった。
いつにも増して激しかった長男の怒りに、満智子はその夜眠れなかった。それまでのように、久栄さんの育て方が悪いんだと思いながら、あれこれと考えるうちに、久栄さんの存在自体が自分を苦しめているのだという答えを導き出す。
これは満智子にとって一筋の光のような、完璧な「答え」だった。

「ばあさんさえいなくなれば。そうしたら家族は私を大事にしてくれる!」

気が付けば、東の空が白み始めていた。

反省したら死ぬ人

警察の捜査では、事件後有力な情報は得られていないとされている。しかし、おそらくだが、家族はもとより周辺の住民らも、もしかしたら満智子が、という思いは抱いていたのではないだろうか。
もともと、いつ離婚となってもおかしくない状況だったうえに、満智子を一番気にかけていた久栄さんが死亡したことで、近藤家において満智子と家族でい続ける必要性がなくなってしまったため、その年の暮れには満智子は近藤家と完全に離縁となった。

春江町(現・坂井市)の実家へと戻された満智子は、逮捕されてもなお、全面否認だった。
2月5日に送検され、その後の検察での取り調べにおいて、しぶしぶ、久栄さん殺害を認めた。というよりも、久栄さんへの憎しみをぶちまけたというほうが正しいのだろう。
いかに自分がかわいそうで、いかに久栄さんが自分を虐げていたか、満智子は取り調べにおいても周りが、久栄さんが、ひいては夫の過去の仕事上のパートナーが悪いのだと、ただそれだけを訴えていた。
実際の犯行も、ひと思いに久栄さんを殺すのではなく、わざと苦しめるために胸を足で踏みつけ、肋骨を折り、そのうえで首を絞めて殺害した。

世の中には、絶対に自分の非を認めない、そういう人が存在する。どんなにわかりやすい加害行為であっても、何かしら言い訳や正当性を見出しては、まるで自分は被害者であるかのようなふるまいをする。
信号待ちで停車中の車に追突したにもかかわらず、その前方の車に対して「バックしてきただろう!」と言いがかりをつける人がたまにいるが、その絶対的な自信はどこから出てくるのか。
裁判で弁護側が申請した精神鑑定は却下されているが、じっくりと満智子のような他罰的思考の持ち主とはどういったものなのかを専門家に鑑定してほしかったなという思いは残る。

生まれついての性格、とも一概には言えないように思うが、ならばどのような出来事や要因がこのような思考を育てるのだろうか。

確かに、他人に対する妬みや嫉妬は、誰でもとらわれる感情であり、それ自体には問題はない。が、満智子のような思い込み、決めつけ、自分が信じる筋書きしか信じない、たとえそれが荒唐無稽で、自分にとってもつらい筋書きであったとしても、それ以外信じようとしないという頑なさは、結局、自分が絶対的に正しいという、究極の自己中心的思考なのだろうか。

こういった人が、もしも他人に対して「愛情」を持ったとしても、それは他者への愛ではなく、自分へのものなのだろう。

久栄さんは満智子を悪しざまに言うこともなく、むしろ満智子を嫌う家族を諫め、15年間心を痛めながらも満智子の子供たちを立派に育てた。それだけでなく、誰よりも満智子を気にかけ、また一緒に暮らそうとまで働きかけ、それを実現させた、普通で考えれば満智子にとっては唯一の味方であった。
なのに、よりにもよって満智子はその久栄さんを憎み、諸悪の根源だとして殺害してしまった。
今後久栄さんの冥福を祈っていきたいと話はしたものの、満智子は最後まで「私が間違っていた」とは認めなかった。
当然、元夫や実の子供らからの嘆願もなかった。

判決は懲役14年。すでに出所した満智子をふたたび家族は許しただろうか。

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参考文献

判決文(裁判所web上公開資料)
読売新聞 平成14年8月22日、8月25日、平成15年8月27日、11月14日大阪朝刊
産経新聞 平成14年8月22日、8月23日、平成15年2月3日、2月25日大阪地方版/福井
朝日新聞社 平成15年2月3日、2月5日大阪夕刊、4月18日、5月28日大阪朝刊