🔓卑怯者~鈴鹿市他・少女連続殺傷事件~

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平成6年9月1日 

三重県上野署に、この日一人の男性が出頭してきた。
男性は、テレビのニュースでとある事件を見聞きし、2年前の出来事を思い出したのだ。

「犬の死体を池に沈めるのを手伝ったことがある……」

そのニュースとは、8月11日に拓殖町の竹谷池において、浮いていた黒いごみ袋の中から、手足のない女性の遺体が発見された、というものだった。
男性がこのことを警察に話そうと思ったのは、その発見された黒いごみ袋が、金網で巻かれていたという特殊な状態だったことが、自身が手伝って遺棄したものと全く同じ状態だったからだった。
【有料部分 目次】
竹谷池の遺体
被害者
犯人逮捕
連続暴行魔
出生の秘密と「におい」
協力者
妻の苦悩
死刑求刑と無期判決
どうしようもない衝動と人間性のかけら
叫び

🔓破滅のロト6~舞鶴市・母親殺害幼児遺棄事件~

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兄妹

平成17年3月29日午前9時50分、京都府福知山市。
その日、男性は仕事でダンプカーを運転し、曲がりくねった府道530号線を走行していた。
春の山里の景色が広がるその道は、普段あまり車の往来も地元民や工事関係者のみでさほど多くない。春先とはいえ、朝晩は気温が5度以下になるほど冷え込み、運転席の窓をすかすと気持ちの良い冷たい風が吹き込んできた。

ふと、道路沿いを流れる上三岳川が目に入った。
道路との高低差は5mほどあり、普段ならば気にも留めない小さな川だが、運転手は思わずダンプを停めた。

上三岳川の川岸に、なにか、いた。

運転手がガードレール越しにのぞき込むと、そこにはうつぶせで両足を川の水につけた状態の幼児が倒れていたのだ。

仰天した運転手は急いで川へと駆け降りると、その幼児の生死の確認をした。生きている。運転手は幼児を抱きかかえると急いで最寄りの民家へ駆け込み、119番通報した。

幼児は女の子で、救急隊員らの保温によって一命をとりとめたものの、上室性期外収縮、徐脈を伴う体温32.5度、直腸温度は34度の低体温となっており、凍死の一歩手前という重篤な状態にあった。

ただこの時点で、付近の住民はこの女の子を全く知らないといい、この年頃の女児の迷子、捜索願も出ていなかった。女の子も名前を話せなかったことから、その身元は分からなかった。

女児の保護から4日後の4月1日午後3時。
高知県吾川郡いの町長沢の国道で、幼い男の子がとぼとぼと歩いているのを住民が見つけ、110番通報した。
男児は4歳で、名前を話すことができた。そこで、署員らは驚愕する。
この男児は、3月31日に京都府警に捜索願が出されていた男の子だった。京都の男の子がなぜ、高知のしかも山奥に?

しかも、行方不明になっていたのはこの男の子だけではなかった。
男の子には2歳の妹がおり、さらには母親の所在も31日夜以降、わからなくなっていた。

その後、京都府警との連絡により、4日前に福知山市内で保護された女の子の兄と判明した。

母親の所在は依然わからずにいたが、警察では、もう一人所在のわかっていない男の存在を把握していた。

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【有料部分目次】
事件発覚
男のそれまで
女のそれまで
破滅へのロト6
傷害事件
限界
目撃者
殺意の形成
こんなに尽くしているのに

残念な家族~岐阜・嬰児殺害コインロッカー遺棄事件~

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昭和60830

暑い盛りの岐阜市。名鉄新岐阜駅はその日も多くの乗客や、隣接する新岐阜百貨店の客らで賑わっていたが、その百貨店の一階北東側のコインロッカーの周辺には警察官らの姿があった。

異臭がする、という通報で駆けつけた警察官がコインロッカーを開けると、そこにはビニール袋に包まれた嬰児の遺体が押し込められていたのだ。

嬰児は生後間もない男児で、へその緒が付いたまま。当然ながらすでに死亡、腐敗が始まっていた。

警察では生後間もなく殺害して遺棄されたとして、岐阜市内の産婦人科などに聞き込みをしたが、不審な妊婦や、出産したのに出生届が出ていないといった事案は見つからなかった。

しかし2年後、ひょんなことからこの事件が解決となった。そこには、登場人物全員残念としか言いようのない秘め事があった。

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火遊びのはてに~広島・医師妻殺害死体遺棄事件~

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平成11812

「すみません、ちょっとお願いしてもいいですか?」

広島県福山市。通行人の男性は突然そう声をかけられた。
振り向くと、そこには大柄な体格の若い男の姿があり、謝礼を払うので銀行のATMから現金を引き出してきてほしい、というのだ。
男性は訝ったものの、男が示した謝礼は「10万円」だった。
男性がATMで教えられた暗証番号を打ち込むと、残高が309万円と表示された。その全額を降ろして男に渡すと、男は約束通り10万円を手渡してきた。

「変な人もいるもんだな」

男性はそう思っていたが、数日後、警察から事情を聞かれる羽目になる。
男性が金を引き出した口座の主の妻が、行方不明になっていたのだ。

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情けない男のメンツ~勝浦・隣人女性殺害死体遺棄事件~

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平成13年9月

千葉県勝浦市の山林で、その山林の所有者が巡回中に白骨遺体を発見した。
遺体は女性で、服は着ていたが靴を履いていなかった。
服はパジャマにカーディガンのようなもので、発見時の状況から県警捜査一課と勝浦署は女性が事件に巻き込まれたとして捜査を開始した。

司法解剖の結果、死因の特定は断念され、死後半年以上経過、としかわからなかった。
現場は勝浦市と大多喜町の境に近い山中で、近隣の自治体から家出人届はでていなかった。

女性は40歳から50歳くらい、身長1m50㎝から1m60㎝と発表された。
勝浦署のサイトでは特設ページが解説され、歯型の公開もされたが、1年経っても有力な情報は得られていなかった。

身元判明

事件の進展がない中、平成15年5月になってとある女性が失踪しているという情報が入った。
公開されていた発見時に着用していたミッキーマウスのパジャマに見覚えのあった人がいたのだ。

失踪した時期も遺体の死亡推定時期と合致しており、その後の歯型、DNA鑑定で女性の身元が判明した。遺体は、千葉県夷隅郡大原町日在の和田啓子さん(当時39歳)。和田さんは借家に一人で暮らしていた。
和田さんの行方が分からなくなったのは平成13年の1月で、スーパーで働き始めた直後のことだったという。
家財道具もなにもかもそのままで、飼っていた犬まで置いていなくなった。
ただ成人女性である和田さんの行方を必死に捜す人や、警察に届け出るほどの人はいなかったとみえる。

近所の人によれば、和田さんは明るく、あいさつもしっかるする人で、借家を放り出していなくなるような人ではないということだったが、実は近所の人らが和田さんを捜さなかったのには理由があった。

和田さん宅の隣に住む住民が、
「和田さんは家賃が払えないから出ていくと言っていたよ、犬の世話を頼むと言われている」
と話していたのだ。

犯人逮捕

遺体の身元が和田さんだと判明して10日、千葉県警捜査一課は市原市に住む男を殺人と死体遺棄容疑で逮捕した。
男は和田さんの隣に住んでいた、あの住人だった。

さらに別の窃盗事件ですでに逮捕されていた、男の10代の息子二人が事件に関与していることも判明。
和田さんとこの親子の間に何があったのか。

それまで

逮捕されたのは市原市の土木作業員、田村和弘(仮名/当時52歳)と、長男(当時18歳)、そして次男(当時17歳)。
3人が日在の借家に暮らしていた平成10年5月頃、隣に一人暮らしの女性が越してきた。これが和田さんだった。
気さくな人柄の和田さんはすぐに和弘親子とも打ち解け、良き隣人として生活していたという。
当時和田さんには内縁関係の男性がおり、その男性と同居し始めて以降も和弘親子との関係は良好だった。
時には男性も交えて一緒に酒を酌み交わし、仕事の愚痴や子供のことも話し合える仲だったという。

しかし平成11年1月、その和田さんの内縁関係の男性が交通事故で死亡してしまった。
和弘は意気消沈する和田さんを慰め、買い物に付き添ったり食事を共にしたり、隣人として支えになろうとしていたという。
当然、男やもめの和弘は若い和田さんに対して恋愛感情も抱いていたというが、男女の関係にはなっていない。

その良き隣人としての関係は、突如崩れ去ることになる。

平成13年1月、和弘は用事でもあったのか、和田さん宅の玄関ドアをいきなり開けたという。その際、たまたま外出しようとしていた和田さんが転倒してしまった。
この時はすぐさま助け起こし、念のため病院に行くよう伝えて終わっていたが、直後から和田さんの態度が変わった。

豹変した隣人

顔を合わせれば、病院の治療費がかかると話し、そのたびに和弘は贖罪のつもりで8000円~1万円程度を和田さんに手渡すようになった。
しかしそれは延々と続き、さすがの和弘も断ることもあった。
すると和田さんは激高し、「馬鹿野郎!そんなことが言えるのか。いつ金を返すんだよ!」と和弘を罵ったという。

実は以前、和弘は少額ながら和田さんから借金をしていた。それの返済が済んでいなかったのか、はたまた互いのなにか勘違いがあったのか、話の着地点は見いだせなかった。

和弘はそういった点で負い目もあり、その後も和田さんの要求に応じることもあったというが、今度は和田さんがその額を上げてきた。
1回に10万から30万円と、どう考えても法外な治療費を請求するようになったという。
和弘はようやくここで、和田さんは自分をカモにしている、と思うようになる。

和田さんの要求は執拗だったといい、和弘は払う意思が歩かないかは別にして、先延ばしにすることで和田さんからの「口撃」をかわす日々だった。

平成13年1月29日、この日はすでに別の場所で暮らしていた16歳の長男が遊びに来ていたため、次男とともに3人でドライブに出かけることになった。
3人が表に出たところ、和田さんが立ちはだかった。

父親の威厳

和田さんが近づいてきたため、和弘は車から降りると、和田さんは
「金出来たんか、ふざけんな。約束はどうなった。バカ野郎」
と、あたりもはばからず喚いた。
さすがに頭にきた和弘が言い返すと、和田さんは「ふざけんな!」というと、和弘の顔を拳で殴った。

それは、16歳と当時15歳だった和弘の子供らの面前で行われた。それは、和弘の理性を吹き飛ばすに十分な行為だったのだろう、和弘は和田さんの首を両手で締めあげた。

和田さんはもがいて抵抗したが、和弘はやめず、あろうことかその光景を見ていた15歳の次男に加勢するよう頼んだ。
この次男にとって、和田さんと父親はどう映っていたのか。次男は和田さんの体を抑えつけ抵抗を封じると、手近にあったロープで父親とともに和田さんの首を絞めた……

和田さんが動かなくなった時、父と子の間でどんな会話がなされたのか。
殺害行為には加わっていなかった16歳の長男ともども、結果として3人は共謀して和田さんの遺体を車に乗せ、かねてからの予定通り、少し出発は遅れたものの「ドライブ」にでかけたのだった。

隠ぺい工作

殺害自体は、咄嗟の出来事だったのだろう。
しかしその後の親子の行動は明らかに隠ぺいであり、綿密な計画があった。
和弘は先述の通り、大家に対し和田さんが自発的に出ていったように装い、自身は犬の世話をするなどしてただの隣人を装った。
自転車をわざわざ駅前の駐輪場まで持っていったり、携帯や洋服も一部処分し、自発的な出奔と見せかけた。
しかし一方では、和田さんの家財道具を持ち出して自分が使用したり、和田さんの借家を家族に使わせるなどしていたという。

大家も和田さんがいなくなったことで家賃のことを気にはしていたが、勝手に解約もできず、また、それまでも家賃は遅れ気味だったこともあってそのままにしていたようだった。

裁判

裁判で検察は、偶発的な犯行とはいえ、隣人の小柄な女性の首を絞め挙げ、あげく当時15歳の息子にそれを手伝わせるなどといった行為は言語道断とし、懲役15年を求刑。
長男と次男は、すでにそれぞれ保護観察処分と中等少年院送致が決まっていた。

平成15年11月19日、千葉地裁の金谷暁裁判長は、
「被害者の言動に問題が全くなかったとは言えないが、かといって殺害に結び付くほどのこととは到底言えず、短絡的な動機に情状酌量の余地は乏しい。
遺体を山中に埋めるなど死者を冒涜する犯行であり、さらに犯行後の被告人の言動は罪に対する自覚や自責の念がうかがわれず、上場も芳しくない」
とし、和弘が遺族に何ら慰謝を講じていないことも含めて、懲役13年の判決を言い渡した。

和弘は事件後、間がない頃はビクビクもしたであろうが、遺体が発見されなかったことや、発見されたのちも身元判明に時間がかかったことでどうやら調子に乗っていた節があった。

家財道具を無断で使用したり、といったことのみならず、犯行を飲み屋で吹聴していたのだ。
ただこれは信じた人がいなかったのか、またはこの男にそんな大それたことが出来るはずがないと元々思われていたのか、通報した人はいなかったようだ。

二人の息子も、その後高校へは行かず働いていたとはいえ窃盗で逮捕されていることを見れば、真っ当な生活を送っていたとは到底思えない。
息子たちについては、親子の情からやむなく追従したに過ぎないとされたが、はたしてそれで片付けてよかったのか、とも思う。

和田さんはなぜ、仲の良かった和弘に態度を豹変させたのか。
きっかけは和弘が和田さん方の玄関ドアを勝手に開けたことでケガをしたことではあるが、この状況も実際よくわからない。
いくら仲の良い隣人とはいえ、勝手にドアを開けるというのはいささか度が過ぎているようにも思う。
ましてや、和田さんは女性の一人暮らしだ。

こういう、和弘の無神経さがかねてより和田さんの心を傷つけていた可能性はないだろうか。
裁判では和田さんにも落ち度があったとはされたが、殺されて何か月も一人寂しく山の中で朽ち果ててなければいけないほどの落ち度であったか。

しかし和弘にとっては、それに値するほどのことだったのだろう。
15歳の息子に手伝ってもらわなければ成し遂げられなかった殺人。
父親としての威厳を傷つけられたというが、その威厳とやらを見てみたいものだ。

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参考文献
判決文