午前4時の熱湯シャワー〜八王子・6歳養女せっかん死事件〜

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笑顔のお誕生日会

平成769日。
八王子市中野上町の小さな二階建てアパートの一室には、子供たちの歓声が響いていた。
大きなバースデーケーキと、甘いお菓子。飲み物もたくさんあった。
7歳の男の子と、6歳の女の子。二人は兄妹で、お誕生日が近かったことからこの日二人分のお誕生パーティーを両親が開いてくれたのだ。

笑顔の兄妹を、両親は目を細めて何枚もカメラに収めた。

ただ、その笑顔はところどころ、青や黒いアザに覆われている。

そしてこの2週間後、妹は死亡した。

顔と右半身の皮膚を真っ赤に爛れさせ、想像を絶する苦しみの中もがき続け、誰にも助けられることなく短い一生を終えた。

幼い女の子が最後に見たのは、母親の再婚相手の姿だった。 続きを読む 午前4時の熱湯シャワー〜八王子・6歳養女せっかん死事件〜

🔒馬鹿者~大阪・男児監禁致死遺体遺棄事件~

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ちいさな行旅死亡人

平成19年5月28日付官報に、このような行旅死亡人に関する記事が掲載された。

行旅死亡人データベースより)

行旅死亡人とは、いわゆる身元不明のご遺体のことをいい、その事件性の有無にかかわらずこのように官報に掲載される。
ある時、このデータベースを漂っていたときにこれを見つけた。
年代別に検索できるのだが、基本子供の遺体は嬰児、胎児であることがほとんどで、いわゆる生み捨てたと考えられるものが多い。
死産の可能性もあるし、そもそも戸籍もまだない状態であるわけでどこの誰なのかは母親のみぞ知る、である。
そんな中で、この死亡人は年齢的に社会との関わりもあったろうし、発見された状況からも完全に殺人死体遺棄事件であると言わざるを得ない状況だった。

このデータベースには解決し身元が判明したものもそのまま掲載されていることから、これをもとに事件を検索したところ、該当する事件があった。

幼い子供をゴミ袋に入れて捨てた人間はどんな奴で、いったい何をしたのか。
しかしそれらを調べれば調べるほど、ここまで想像力の欠如した人間が社会で普通に生活しているのかと恐怖を覚えるほどの、バカとしか言いようがない救いがたい人間がいるという事実をただ知ることにしかならず、感情が滅多打ちにされただけであった。

側溝のゴミ袋

平成19年4月23日夕方、大阪府能勢町の国道173号線につながる道路沿いの側溝に、青いごみ袋のようなものがあるのを通りがかった男性が見つけた。
この道路は生活道路や抜け道としても利用されることは少ないといい、交通量も日にせいぜい4~5台だった。
男性が近寄ると、ごみ袋の横に何かが見えた。その「何か」は、小さな子供の全裸の体だった。
男性はすぐさま警察に通報、警察の調べによるとその遺体は2歳前後の男児ということで、死後約一週間。すでに顔は一部腐敗がはじまっていた。

状況から、全裸の状態でごみ袋に押し込められた後この場所に遺棄されたが、おそらく風雨や動物の影響でごみ袋が破れ、その後頭部だけにごみ袋がかぶさった状態になったとみられた。

その体には、動物によるものなのか判別のつかない外傷もみられたことから、単なる死体遺棄にとどまらない可能性も視野に警察は捜査を進めた。

はやい段階で判明すると思われた男児の身元特定は思いのほか難航した。
男児は栄養状態が悪くなかったため、直前までごく普通の環境で育っていたと思われることから、虐待要注意の家庭のみならず、付近の自治体に所在確認できない子供がいないか確認を急ぐよう通達が出た。

あわせて大阪府警は、府内で昨年以降に子供を連れて家出したなどの捜索願が出ている13件について捜査したところ、ある若い母親の存在が浮かび上がった。
淀川区内で実父らと暮らしていた女性が、子供を連れたまま実家を出て行方が分からなくなっていることをつかんだのだ。その母親が連れている子は、1歳8か月の男児だった。

そして5月17日、大阪府警は側溝で見つかった男児の遺体がこの母親の子供であると特定、当時豊中市で生活していた21歳の女と、その再婚相手の男を尼崎市内発見し、男児の死体遺棄容疑で逮捕する。(・・・再婚?)

逮捕されたのは田宮美香(当時21歳)と、再婚相手の田宮元貴(当時21歳)。男児は美香の子供で、峯松優ちゃん(当時1歳)だった。

【有料部分 目次】
驚愕の死亡原因
夫婦のそれまで
死亡時期と目撃情報の謎
出刃包丁と「ミキサー」
かわいそうなあの人
記念日

🔒鬼の棲む家~泉崎村・虐待死事件

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入学式にて

平成18年4月。福島県泉崎村の小学校では入学式が執り行われていた。
両親の手を引かれ、緊張した面持ちながらどこか晴れ晴れとした顔で校門をくぐる子供たち。
そんな中、教師や保護者は新入生の一人である児童の姿にくぎ付けとなった。

その新入生は、異様だった。

身長は他の児童が110センチから120センチであるのに対し、約80センチと、とても7歳になる子供とは思えなかったのだ。
身長だけではない、体重も10キロあるかないかで極度に痩せ細り、足はまるで「棒切れ」のようだった。さらに、ランドセルを背負うとそのままひっくり返ってしまった。

「……病気なのかな」

一部の保護者の間では心配する声もあったが、特に介助をする保護者の姿もそばになかった。

入学式から3か月後、その痩せ細った児童の両親は保護責任者遺棄「致死」の容疑で逮捕された。

しかし、死亡したのはこの痩せ細った新入生ではなかった。

捜査員が絶句した現状

平成18年7月28日、3歳になる三男に適切な養育をせず、衰弱死させた疑いで福島県泉崎村の夫婦が逮捕された。
逮捕されたのは無職の白髭功(当時40歳)と、その妻で同じく無職の和歌子(当時33歳)。

調べによると白髭夫婦は、平成18年5月28日ころ、三男・広(ひろむ)ちゃん(当時3歳)の具合が悪くなったことで病院に担ぎ込んだが、広ちゃんは死亡。状況から病院が警察へ通報したことで事件が発覚した。

しかし、広ちゃんの遺体は捜査員らが憤りを隠せないほどの凄惨な状態だった。
体重は平均の半分の約7,9キロ、これは生後半年程度の乳児の平均体重で、全身に暴行を受けた痕があった。
広ちゃんの手足に筋肉はほとんどなく、ずいぶん前から寝たきり状態にあったことも分かった。そして、死亡直前に食べさせられたとみられる「バナナ」のかけらが喉をふさいでいた。

広ちゃんは、反射運動すらできないほどに衰弱させられていたのだ。

広ちゃんが死亡した直後、連絡を受けた警察が自宅を訪問したところ、家の中には極度に痩せ細ったあの児童がいた。しかも、そのほかに姉と思われる女児の姿もあった。
女児もその発育が一目で極端に遅れていることが分かるほどの状態で、女児の腕には刃物で切り付けられた傷まであった。
警察はすぐさま二人を児童相談所へ連れて行き、そのまま姉弟は保護となった。

出迎えた村の女性職員が思わず子供たちを抱きしめると、きょとんとした顔をして、
「なんでそんなに優しいの?」
と聞いてきたという。

「どんなことがあっても親の責任を追及する。」

捜査員の一人は戦慄いてそうつぶやいた。
この家には3人の子がいて、広ちゃんは死亡、上の兄と姉は保護されたが、この夫婦の子供はあと2人いた。
長女は生後3か月で乳児突然死症候群で死亡していたが、長男は健在だった。が、ここにはその姿はなかった。

平成14年に功と和歌子は長男の親権を失っていたのだ。

【有料部分 目次】

長男への虐待
「難しい家族」
功と和歌子
地獄の日々
裁判
小さな地域社会の限界
親子という幻想

🔓フェミサイド〜藤沢市・女性タクシー運転手強盗殺人事件〜

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拘置所にて

「鑑定を受けようと思ったのはなぜ?」

目の前の男は、自ら精神鑑定を申し出ており、医師は数ヶ月に及ぶ鑑定を担当していた。

「……人を殺めちゃうことを繰り返し思い浮かべるんです。」

男はそう言うと、縋るような、こちらの反応を窺うような顔をする。

「治したいの?」

医師の問いに、男はこう答えた。

「治していただくか、殺してもらうしかない」

男は殺人願望があることをしきりに訴えたが、同時に自分自身がそれに怯えているようにも思えた。

男はその言葉通り、この会話から数年後、見ず知らずの人を殺害した。

事件

平成14年8月31日。神奈川県藤沢市獺郷(おそごう)の路地に、女性の悲鳴が響き渡った。
時間は午前1時50分、その声に気づいたのは近くで養豚場を経営する家族だった。

「早くきて、タクシーの運転手さんが助けを求めている」

通報者の女性によれば、女性の悲鳴で外を見ると、路上にタクシーが止まっており、その後そのタクシーは走り去ったという。
通報者らが懐中電灯を持って外に出た時、路上をふらつきながらこちらに歩いてくる人影が見えた。そして、そのままベシャッという音を立てて崩れ落ちた。

救急車が10分後に到着したが、被害者はその場で死亡が確認された。

死亡したのは、横浜市保土ヶ谷区のタクシー運転手、川島りつ子さん(当時50歳)。
タクシー会社によれば、その時タクシーに搭載されている緊急ボタンが押されていたという。

この頃、各地でタクシー強盗が頻発しており、この事件も当初はその類だと思われた。運転手が女性だったのも、女性であれば奪いやすいと思ってのこと、という見方があり、各新聞社等の報道も、女性タクシー運転手の危険性や各タクシー会社の防犯対策などを掲載するにとどまり、実際にこの事件の報道もわずか数日で終わった。

というのも、事件発生から30分後、犯人を名乗る男が「俺がやった」と110番通報してきていたのだ。
奪ったタクシーで茅ヶ崎市内のコンビニまで来ていると告げた男の言葉通り、警察官らが急行するとそのコンビニは川島さんが乗っていたタクシーと、男の姿があった。
助手席には川島さんを殺害した凶器と思われる刃渡り7、5センチの切り出しナイフ。川島さんは頸部や背中など26箇所もの刺し傷、切り傷を負っていた。

警察の声掛けに男は応じ、抵抗することもなくその場で逮捕された。

男は石田勇一(当時45歳)。
8月21日に、横浜刑務所を満期出所したばかりだった。

石田は取調べに対し、「女性を殺したいという願望があった。あの後別の女性運転手のタクシーも襲うつもりだった」と話していた。

女性を殺したい、石田ははっきりとそう言ったが、実は石田が女性に殺意を抱いていたのはこの事件を起こすずっと以前からだったのだ。

【有料部分 目次】
出所直前
殺したい殺したい殺したい
予感
殺したいのは女
暴力と共に生きて
憎しみの象徴
間欠性爆発性障害
この世の女なんて、すべて死んでしまえばいい
冷めやらぬ殺人の衝動

「餓死日記」とその不可解〜寝屋川・主婦餓死事件〜

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寝屋川の文化住宅

昭和525月。大阪府寝屋川市の萱島にある文化住宅ではいつものように主婦たちが朝餉の準備に追われ、子供達は次々と学校へ走り、家々からは仕事に向かう男たちが駅へと急ぐ姿が見られた。

文化住宅は薄いベニヤの壁の向こうに隣の部屋があるという作りのため、隣の話し声はまる聞こえだった。

その長屋の一室で暮らす主婦は、朝の家事仕事の合間に聞こえる隣家の子供の泣き声が気になった。あの声は一番上のマー君やろか。隣は5人目が生まれたばかり、お兄ちゃんがかまってもらえず泣いてるんやろか。

最初はそう思っていたが、隣家の子供はいつまで経っても泣き止まなかった。

午前7時半。さすがに不審に思った主婦は、隣の玄関へ回ると泣いている子供に呼びかけた。
「マー君、どないしたんそんな泣いてからに・・・」
その家の9歳になる長男に玄関の鍵を開けさせ中に入った主婦は、絶句した。

その家の主婦が、布団の中で冷たくなっていたのだ。その傍らには、3ヶ月前に生まれたばかりの赤ん坊がすやすやと眠っていた。 続きを読む 「餓死日記」とその不可解〜寝屋川・主婦餓死事件〜