🔓罪万死に値する~横浜・一家3人殺害事件~

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県道にて

平成14年8月4日、午後1時半。
富山県富山市東田地方(ひがしでんじがた)の県道で、一台の不審な乗用車が目撃された。
赤色のその乗用車は、県道を蛇行するような運転をしており、警察にも危険走行をしている車がいるとして通報が入っていた。

近くをパトロール中だった覆面パトカーは、ある情報を持っていたことからその赤い乗用車を捜索、後にその車を発見、停止させた。
その乗用車は、神奈川県内である事件に関係した人間が乗っているとして、神奈川県警から全国手配されていたのだ。
警察官が車を停止させ、運転手を確認。事情を聞いたところ、神奈川県警から手配されていた人物だと認めたため、そのまま富山署に任意同行となった。

この時、車内には女性の姿もあった。実はこの女性の行方も警察は追っていた。

この女性の両親とひとり息子は、8月日夜に自宅マンションでメッタ刺しにされ殺害されているのが見つかっていたのだ。

都筑区の惨劇

警察に知らせたのは、そのマンション3階に暮らす老夫婦の長男だった。
千葉県内に住んでいた長男は、数日前からこの横浜市都筑区のマンションに住む両親と連絡が取れず、心配して訪ねてきていた。
外から見ると、洗濯物が干しっぱなしのような状態だったことで心配は嫌な予感に変わった。
警察に連絡したうえで、都築署員と共に合鍵で部屋に入ると、そこはまさに血の海だった。

父親はリビング、母親は廊下、そして中学生になる甥っ子が寝室でそれぞれ息絶えていた。
全員寝間着姿で、状況から死後数日とみられた。

【有料部分目次】
行方不明の男女
嫉妬深い男
裁判
夫婦のそれまで
離婚話
拉致監禁
弁護士
私立探偵とほどかれた髪
はずしていなかった、「思い込み」
話し合いたかっただけ
妻の言い分、夫の言い分
被害者、遺族であっても……

🔓人間失格~伊仙町・一家3人逆恨み殺傷事件~

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平成20年2月1日、福岡拘置所において死刑が執行された。
男は平成14年に鹿児島県で実兄の妻、その娘と息子を襲って死傷させた罪で、平成16年に鹿児島地裁で死刑判決を受けていた。
その後いったんは控訴したが、その二か月後に控訴を取り下げ、刑が確定していた。
取り下げの理由は、記されていなかったという。

確定から4年、人間失格と言われた男は、犯行の動機や詳細について多くを語らないまま、永遠の贖罪の旅に出た。

事件

平成14年8月16日、夏休みのこの日、サトウキビ畑の広がる鹿児島県徳之島のとある民家に、突然少年が駆け込んできた。
「電話して!電話!」
そう叫んだ少年は血まみれで、その場に倒れ込んだ。
驚いた家人が少年を介抱しつつ、まずその少年の父親に連絡した。少年はこの家の近所で暮らしていて、両親らとも顔なじみだった。

その頃、職場にいた少年の父親は電話で息子のケガを知らされた。何事かと、要領を得ない父親に対し、電話をかけてきた近所の人がこう告げた。
「弟さんにやられたと言ってる……家族みんなが刺されたみたい」
事情が呑み込めないまま、父親は110番通報、駆け付けた警察官らが見たのは、自宅で血まみれで倒れている母と娘の姿だった。

病院へ救急搬送されたが、母親も10代の娘も、すでに死亡。同時に、助けを求めた少年はこの家の次男(当時13歳)で、こちらも重体であった。

死亡したのは、鹿児島県大島郡伊仙町の保険外交員・名古和美さん(当時40歳)、その娘で徳之島高校3年の千尋さん(当時17歳)。
和美さんは左胸を刃物で刺されており、その場でほぼ即死状態だった。千尋さんも、刃物による複数の傷があり、その数は10数か所にのぼった。二人の死因は失血死。
重体の次男の傷も、生きているのが不思議なほど深かった。
傷は左胸一ヶ所だったが、大動脈切創、膵断裂、肝・胃切創、外傷性仮性大動脈瘤、外傷性仮性膵嚢胞、そして出血性ショックと重篤な状態だった。
ここまでの深手を負いながらも、次男は必死で100m走り、近所の家に助けを求めたのだ。

次男の証言で、家族を殺傷した人物は特定されていた。

そして、同じ日の11時40分ころ、一人の男が凶器の刺身包丁をたずさえ警察署に出頭してきた。

「自分がやりました」

鹿児島県警徳之島署は、男を殺人未遂の容疑で緊急逮捕。その後、殺人と銃刀法違反で再逮捕となった。

男は、名古圭志(当時32歳)。
殺害された和美さんの夫の、実弟だった。

【有料部分目次】
動機
生い立ち
憤怒
お前の父さんを恨め
最後通牒
報復
死刑判決
回避性人格障害
人間失格

私のことを、恨みますか〜米子・税理士ら2人殺害事件〜

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平成22年2月26日。鳥取地方裁判所米子支部では、ある男への論告求刑が行われていた。
男の罪状は、強盗殺人。それ以外に死体遺棄など6つの罪状が男にはあった。被害者は高齢の男女二人、ともに殺害されていた。

殺害された女性の遺族は極刑を求めており、裁判員裁判で初の死刑求刑になる可能性も高かった。
被害者参加制度を利用して、公判には被害女性の息子が検察官の隣に座った。その遺族男性の隣で、北佳子次席検事は男に対し、求刑した。

「被告に無期懲役を求刑する」

隣の遺族男性が、目頭を押さえて俯いた。
論告求刑の前、この遺族男性はある証人に対し、静かに語りかけていた。

「私は死刑を望んでいる。死刑になったら、私を恨みますか。」

証人は涙でぐしゃぐしゃの顔のまま、「(極刑を望むのは)当然だと思います」と絞り出した。
その様子を見ていた裁判員の多くが、泣いていた。

次席検事の論告求刑の後、遺族の男性が意見陳述を行った。
「極刑以外の判決ならば、恐ろしい判例を作り出すことになる。道場の余地があれば、死刑にならない。そんなことでは犯罪の抑止力が低下する。」
検察の無期求刑に対する心の叫びに思えた。

被告の男は、午前中の情状証人への質問の時は感情の昂りを抑えられない場面もあったが、その後は落ち着きを取り戻し、
「被害者の無念さや思いをしっかり受け止め、生涯ずっと背負っていきたい」
と頭を下げた。 続きを読む 私のことを、恨みますか〜米子・税理士ら2人殺害事件〜

つむじ風にさせられた殺人~京都・17歳ピストル魔3人殺傷事件~

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平成8年11月28日、京都地方裁判所。

「主文、被告人は無罪」

この日、京都地裁は48歳の無職の男性に無罪判決を言い渡した。
男性は殺人などの罪で起訴されていたが、冤罪ではなかった。確実に、一人を殺害、二人に重傷を負わせる大事件を起こしていたのだ。
にもかかわらず、男性は無罪となった。
しかも事件が起き、逮捕されたのは昭和41年、起訴され裁判もすでに4回行われていた。
昭和45年以降、男性の裁判は公判停止となっていたのだ。 続きを読む つむじ風にさせられた殺人~京都・17歳ピストル魔3人殺傷事件~

🔓逃げる女、追いかける男~3つのDVにまつわる事件~

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一度は愛した相手が肉体的、精神的、経済的、性的に暴力を振るうようになったら?
結婚前にはわからなかった、相手の本性はなぜか、そう簡単に別れることが難しいような状況になって初めて明かされることが多い。

たとえば結婚して、子供が出来るまでは、妻が仕事を辞めるまでは、家を妻の実家近くに建てるまでは……
男女問わず、相手の本性を知ったときにはすでに身動き取れない状況になってしまうこともある。

しかも厄介なことに、それらDVについて世間と被害者の受け止め方に大きなズレがいまだに存在するのだ。
束縛されるのは愛されているから、別れるなんて子供がかわいそう、専業主婦させてもらえるなんて羨ましい、女性からの暴力なんて可愛いもんだろう、そういうあなたにも悪い部分があるんじゃないの……

多くのDV加害者は非常に外面がよく、他人には良い夫、良い妻に見られがちである(人前でもやる奴はただのアホである)。だから被害者は相談しても周囲に理解してもらえず、そのうち相談すらできなくなり、自分が死ぬか相手を殺すかはたまた全員で死ぬかみたいな話に発展することもあるのだ。

配偶者ならば無理矢理SEXしたっていい、配偶者ならば子供の面前で罵倒したって良い、そんな勘違いをしている人は令和になっても山ほどいる。

配偶者であってもやっていいことと悪いことがあるという基本の事件、接近禁止命令下での凶行そして、邪魔した人を殺害した事件。
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