限界破裂〜虐げられた人々の愛の事件〜

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普通に生きていても、時に他人から不当な扱いをされることがある。
会社でのパワハラ、学校でのアカハラ、そして夫婦間、恋人間におけるモラハラ、DVなど。
相手との立場の問題や相手に対する感情の問題で、不当な扱いだとわかっていてもそれに抗議できず、ただ耐えることでやり過ごそうとする人も少なくない。
また、怒りがあったとしても同じ土俵に立ちたくないという思いで、あえて無関心を通そうとする人もいるだろう。

特に日本人はできるだけ、争い事を避けようとする傾向があるのも事実で、少々のことで騒ぎ立てるのはみっともない、そう思う人もいる。
限定していうと、男女間夫婦間における様々な問題は、第三者が介入し辛い面もあって気がつけば虐げられていた人は一人その理不尽な思いを抱き続けることになる場合が多い。

一方で人にはそれぞれ堪忍袋というものがあり、その容量は個人差が激しい。

虐げられた人々の我慢の限界が来た時、それまで蔑ろにしてきた本当の加害者は狼狽え、そして許しを乞う、自分がしてきたことを棚にあげ……

いくつかの我慢の限界を超えた男女の事件。 続きを読む 限界破裂〜虐げられた人々の愛の事件〜

FUNNY MONEY~あるふたつの家族の結末~

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家庭の悩み事のほとんどは現預金が解決してくれる、とは真理で、多くの問題は解決されると私は思っている。
すべてではないにしろ、とにかく一家心中みたいなことは避けられるんじゃないかと思うのだ。
現預金さえあれば生まれなかった悲劇は山のようにあって、格差社会や貧困問題が事件につながることは少なくない。

が、同じ金がない、でも、登場人物に問題があって、さらにはそれを解決する手段を講じない、現実を見ないという場合もある。

ある二つの家族がたどった破滅への軌跡。 続きを読む FUNNY MONEY~あるふたつの家族の結末~

🔓理解不能~ふたつの親子無理心中事件~

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新聞記事やニュースなどで日々、事件の報道がなされる。
死亡した人の数やその関係性などから注目を集める事件はその後の裁判の様子なども報道されるが、多くはその上っ面だけを舐めるだけで事件に至るまでの細部は報道されない。

特に、家庭の中で起きた事件については、被害者と加害者が血縁関係だったりすることで被害感情も複雑なものとなり、余計に詳細は表に出てくることが少ないと言える。時に、被害者側に一定の落ち度がある場合もあるからだ。
また、無理心中事件なども詳細はなかなか表に出ない。加害者も死亡しているケースだとそもそも裁判すら開かれないため、真相は闇の中となってしまう。

しかし私たちは知りたい、父が、母が、その心に刃を忍ばせるようになったのはなぜなのかを。そして、なぜ幼い子供を含め複数人数殺害しているのに、死刑どころか無期懲役も回避されるケースがこの無理心中においては多いのか。子の命はどこまで軽いのかを常々疑問に思う。

これは、解決策を講じることなく流されるままにその場しのぎの責任逃れをしてきた男と、思い通りにならないことをどうしても受け入れることが出来ずにきた女と家族の、それぞれの事件。いずれも、全く理解不能。

【有料部分 目次】
倶知安町の家
事件
はじまり
破産者、家を建てる
いわゆる一人旅
浮気、パチンコ、旅行三昧
まさかの退職、そして無職
残金5,600円
ズルい夫婦
そのかたち
結末
懲役26年
鹿児島の家
事件発生
家族のそれまで
泣いて拒む妻
心中未遂
ラーメンのおつり事件
精神鑑定
私だけが悪いんですか

いい人。~千葉県横芝光町・妻子殺害放火事件~

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未明の火災

平成22年12月30日午前6時50分、千葉県のとある民家から出火、木造二階建ての住宅及び隣接する作業場の二棟を全焼した。

この家には60代の夫婦が暮らしていたが出火当時別棟にいたため難を逃れた。
家業で大工を営んでいたといい、火元はその建設作業に必要な作業場とみられたが、警察は失火と不審火の両面から捜査をした。

近隣の住民は複雑な思いを隠せなかった。この家には、つい一か月前にも火災が起きたばかりだったからだ。
しかもその火事で、この家の若夫婦のうち妻と幼い息子が焼死していた。

12月1日の惨劇

二棟を全焼した火災からさかのぼること約一か月前。
この横芝光町の住宅から男の声で「妻と子供を殺害してしまった」と110番通報があった。
警察が駆け付けると、民家の2階で女性とその子供と思われる男児が死亡しているのを発見、さらに遺体周辺には火を放った痕跡も残っていた。

その場で大やけどを負っていた男性は救急搬送されたが、搬送される際に「自分が殺して火をつけた」と話していたことから、殺害されたのはこの男の妻と子供で、殺害したのはこの男である可能性が高いとして男の回復を待った。

殺害されたのは男の妻で介護施設職員の鈴木淳子さん(当時34歳)と、息子の大地君(当時6歳)と確認。
淳子さんには首をひも状のもので絞められた痕に加え、背中や腹部に刃物による刺し傷が複数見られた。大地君は火傷の状態がひどかったが出血した形跡が見られたことから、淳子さん同様刃物で刺されたのちにふたりは火を放たれたと推測された。
のちの司法解剖の結果、淳子さんは熱傷性ショック死、大地君は出血性ショックと熱傷性ショックの両方によって死亡したとわかった。
二人は発見当時別の部屋にいたが、淳子さんの布団には灯油のようなものがまかれて火がつけられており、まだ息のあった淳子さんと大地君は身動きが取れないまま、火に焼かれたのだった。

一方で一命をとりとめた男は、淳子さんの夫で大地君の父親である鈴木章弘(当時34歳)。警察が到着した際、本人も手足に大やけどを負った状態にあり救急搬送されていたが、その後右足を太ももの付け根から切断した。
警察では搬送時に同行した警察官に対し、章宏が「仕事のことで行き詰っていた。」などと話していたことから、父親による妻子を巻き込んだ無理心中事件とみて捜査を始め、章弘の退院を待って殺人と非現住建造物等放火の容疑で逮捕した。

「家族3人、手をつないで散歩したりして仲が良かったのになぜ…」

近所の人々は悲しみと困惑の色を隠せなかった。
あたりは田畑が広がる長閑な集落。鈴木家は工務店を営んでいて、章弘は父親とともに仕事に励んでいたという。
敷地内の別棟で若夫婦と子供が生活をするという、田舎ではどこにでもあるような普通の暮らしがそこにあった。
しかしこの惨劇はそのどこにでもあるような暮らしの中で、というか、そういった暮らしだからこそ、起きたと言える。

仲の良い、幸せな風景の裏にはこれまたどこにでもあるようないくつかの問題が隠されていたのだ。

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🔓みんな、気持ち悪い~札幌・次女三女殺傷事件~

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平成24年10月、札幌市豊平区の担当者に対し、一人の母親が家庭の不安を口にしていた。
自身の母親と妹らと同居しているというその女性は、母親との関係がうまくいかないことから世帯分離について相談したいと話した。
女性自身にも3歳の子供がおり、交際相手との子供の妊娠が発覚したばかりだという。これまで、生活能力に問題のあった母親と、まだ幼い妹たちの面倒を見てきた女性だったが、ここへきてその母親との関係が深刻なレベルの悪化しているといい、身重の体を守るためにも世帯を分離したい、というのが理由だった。

ただ、世帯を分離できたとしても、女性には妹たちのことが気にかかっていた。
「母が私に向けていた暴力を、妹たちに向けるかもしれない」

3か月後、その話は最悪の形で現実となった。

事件

平成25年1月26日、札幌市豊平区平岸のマンションで、11歳と8歳の姉妹が腹部を刺されるなどして、そのうち11歳の一戸楓香さんが出血多量で死亡した。
おなじく左わき腹を刺された妹(当時8歳)は、重傷ではあったが一命をとりとめた。
さらに現場のマンション室内では、二人の女児の母親とみられる女性も刃物で腹部を刺して倒れており、状況や通報者の証言などからこの母親が娘を道連れに無理心中を図ったとみて捜査を開始、比較的軽傷で済んだ母親が28日退院したのを待って、殺人と殺人未遂容疑で逮捕した。

逮捕されたのは、二人の母親である一戸みゆり(仮名/当時38歳)。
調べに対し、「子供と一緒に死のうと思い、寝ているところを刺した」と供述。事件直後、当時同居していた男性に対し電話で「やっちゃった、ごめんね」などと犯行をほのめかしていたことや、そのさらに前、男性が在宅していた時にも娘らの首を絞めるなどしていたことから、みゆりが無理心中を図ったことに間違いはなかった。

事件が報道されると、関係者らの間には衝撃が走ったのと同時に、「あぁ、やはりこうなってしまったか」という思いに駆られる人々もいた。
実はこの一戸家は、数年前より様々な事情で福祉や行政、警察や児童相談所などがかかわり続けてきた家族だったのだ。

そして、事件が起こる18日前には、亡くなった楓香さんが家出をし、警察に保護を求めるという事態まで起きていたのだ。

にもかかわらず、助けられなかったのはなぜだったのか。

事件後、みゆりには精神鑑定が行われ、その間には札幌市がまとめた検証報告書が公開された。
その後行われた裁判ではみゆりの知的障害が判明、そしてみゆりの壮絶なそれまでの人生と、事件に至る経緯が明かされた。
その中では、長年妹らの世話をし、事件直前にはみゆりとの関係悪化で家を出ざるを得なかった長女(当時21歳)が、
「深く悲しんでいる。妹が死んだことは信じられない。妹たちには学校に行って、普通に結婚して欲しかった。母が憎い。殺されるのは自分が代わりになれれば…」
と検察に託したコメントも読み上げられた。
自分が家を出たばっかりにこんなことになってしまった、長女の悲痛な思いは、母親への憎しみとなってぶつけられたが、それでも生活能力のない母親を支えてきたのもまた、この長女だった。

札幌地裁は、みゆりに対して懲役14年(求刑懲役15年)の判決を言い渡した。弁護側が主張した知的障害や、当時のみゆりは心神耗弱状態にあったという主張は、親として子に手をかけることは絶対に許されないし、第三者の責任という問題ではなく、被告が責任を負うべきとして退けた。

みゆりは事件以前から自殺未遂を繰り返しており、特に事件直前は自ら110番したり、児相に対して自殺をはかってしまったと告白するなど、かなりSOSを出していた。
それでも、問題行動のあった長男以外の子供らは保護されることなく、すべてをみゆりに任せた結果、最悪の事態が起きてしまった。
弁護側は、そういった点を踏まえてもっと関係機関が踏み込んでくれていれば少なくとも楓香さんが死ぬことはなかったとした。
加えて、このような事態につながったその「背景」についても裁判ではいろいろと明かされていたのだが、中身が中身だけに表に出ることがなかった。
市の検証報告においても、その肝心の部分は「深刻なトラブル」という表現で誤魔化された。

いったい、何が起きていたのか。

【有料部分 目次】
穢れを畏れぬ人々
知的障害
長女
狂いゆく母
やぶれかぶれ
「ごめんね、やっちゃった」
気持ち悪い人々