彼女が死んだ理由~倉敷市・11歳女児餓死事件②~

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排除される女

一審では友里恵には家族がいたことが言及された。いわゆる天涯孤独の身ではなかったこと、また、友里恵自身、高校を卒業して信用金庫に就職するなど、知的な面でも社会的な面でも問題を抱えていたわけではなかったことなども挙げられた。
さらに、陽子さんの父親である人物から、養育費が振り込まれており、その通帳も当初友里恵が保管していたのだ。
残高はなんと340万円。おそらくだが、陽子さんの年齢と照らし合わせると、月々3万円程度がずっと振り込まれ続けていたのではないかと思われる。
にもかかわらず、それらに頼ることをしなかったのはなぜか。 続きを読む 彼女が死んだ理由~倉敷市・11歳女児餓死事件②~

🔓無戸籍よりキツい母の家庭内教育~鳩ケ谷市・20年間無戸籍判明事件~

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平成19年3月27日

さいたま地裁。
この日の午前、とある事件の判決公判が開かれた。
被告は、20歳代の男。罪状は、未成年者略取と窃盗だった。
任介辰哉裁判長は、「卑劣で悪質な犯行だが、学校教育を受けず、閉鎖的生活をし、知的障害も認められる」とし、求刑3年に対し、懲役2年6月、執行猶予5年の判決を言い渡した。
実はこの男は、公判中から「別の事柄」が発覚して注目されていた。
裁判長が情状酌量として認めた事柄には、「男が20年間無戸籍」であったことも含まれていたのだ。

事件概要

平成18年6月25日夕刻、埼玉県鳩ケ谷市内の公園で遊んでいた当時4歳の女児が行方不明となった。
その後、同じ鳩ケ谷市内のスーパーで女児は無事保護されたが、下着を盗まれていたという。
埼玉県警武南署は、窃盗と未成年者略取の疑いで捜査をし、10月になって、鳩ケ谷市内に暮らす当時二十歳の男を逮捕した。

しかしその後の展開は予想外のものとなった。
武南署が男の身元を紹介したところ、なんと無戸籍ということが判明したのだ。
男は両親と姉との4人暮らしだったが、13歳年上の姉には戸籍があった。
さいたま地方法務局が調査し、両親とこの男性は間違いなく親子関係であることが認められたため、10月半ばに母親が届を出し、男は戸籍を得ることができた。
戸籍法では出生の届けは14日以内に行うと定めており、正当な理由もないのに届け出を怠った場合は3万円以下の過料が科せられる。
この男には家族がいた。にもかかわらず、戸籍がないというのはどういう事情だったのか。

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【有料部分目次】
無戸籍の理由
少年時代
母親
やがて暴発
なにが事件を起こしたか

🔓だってあの子が悪いのに~鹿嶋市・女性リンチ生き埋め事件~

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平成13年6月9日

茨城県鹿嶋市。
北浦に面した県道18号線から東に1キロほど離れた場所で野良犬が数頭、群がっていた。

「なんであんなに犬がいるんだろう」

田んぼのわきのあぜ道で農作業をしていた男性(63歳)は、野良犬らの動きが気になった。なにか、動物の死骸でもあるのだろうか。
犬たちを追いやった男性が、犬たちが群がっていた地面を探ってみると、そこにはなにやら白いものが見えていた。
男性は知人を呼びに行き、その知人とともにもう一度その白いものを確認して驚愕する。
それは、人の頭蓋骨だった。 続きを読む 🔓だってあの子が悪いのに~鹿嶋市・女性リンチ生き埋め事件~

🔓流浪の運命共同体~長野・山梨・静岡・男女殺害遺棄事件~

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無念の記者会見

「なぜ母が殺されなければならなかったのか。そしてなぜ、姉がそれに加担したと言われるのか、まったく理解できません。
ふたりは仲の良い母娘でした……」

黒磯市役所で記者会見に応じた男性は、悔し涙をにじませた。
傍らには、妻の姿もあったが、この二人は一歩間違えれば今頃生きていなかったかもしれなかったのである。
ふたりは生き延びたが、入れ替わりに行方不明になった男性の母と姉は、壮絶な人生を送る羽目になってしまった。

平成一五年二月二六日

この日、とある傷害事件で男が逮捕された。
男は昨年に静岡県伊東市内の貸別荘で、当時行動を共にしていた男性とその妻、そして一歳の子供に暴力を振るい怪我をさせたとして、静岡県警から指名手配となっていたのだ。
男の名は、上原聖鶴(当時三五歳)。

ところが調べを進めるうちに、
「長野県内で仲間らとともに二人殺している。遺体は甲府市内のアパートにある」
と供述したため事件は違う展開を見せ始める。
甲府市飯田のウィークリーマンションを捜索したところ、供述通り、室内から男女と思われる遺体を発見した。
上原の供述では、自分以外の仲間もここへ遺体を運んだ行為にかかわっているとしていて、警察は、上原と行動を共にしていた女と、若い男二人も死体遺棄の容疑で逮捕した。

当然警察では二人の殺害にもかかわっている可能性が高いとして調べを進めたところ、男二人は殺害にかかわっていないことが判明。警察は、三月にはいって、上原と女を二人に対する殺人の疑いで再逮捕した。
上原と一緒に逮捕されたのは、高須賀美緒(仮名/当時二七歳)。美緒は、昨年の六月から上原と行動を共にするようになったというが、上原には妻子があった。しかも、その妻子もずっと行動を共にしていたようなのだ。
わかっているだけでも、上原と妻子、美緒、若い男二人、この六人が逮捕当時共同生活を送っていたとみられた。
さらに、上原は美緒と生活を共にし始める前、美緒の弟夫婦とその子供と一緒に生活をしていた。
そして、弟家族と離れた直後、今度は美緒とその母親を呼び出し、まるで入れ替わるかのようにその母娘と生活し始めていたのだ。

では、亡くなった二人はいったい誰で、どんな関係の人間なのか。
遺体はそれぞれ男女一名ずつで、男性は二〇代、女性は五〇代~六〇代とみられた。
遺体の状況は、女性のほうが腐敗が進んでいたことから死亡時期が違うこともわかっていた。
その後の司法解剖の結果、男性は神奈川県厚木市の大学生、中里善蔵さん(当時二一歳)、女性は栃木県黒磯市(現・那須塩原市)在住の高須賀悦子さん(仮名/当時五三歳)と判明。

悦子さんは、美緒の母親だった。上原と美緒は、中里さんと悦子さんを殺害した容疑で再逮捕されたのだった。

発端

事件の始まりをたどっていくと、平成一三年に遡る。
当時、とび職関連の仕事をしていた美緒の弟・英治さん(仮名/当時一九~二〇歳)は、仕事関係で上原と知り合った。
五月ごろ、英治さんは上原からこう聞かされたという。
「俺とお前の名前が暴力団のリストに載ってる。俺が何とかしてやるから、一緒に逃げよう、お前も俺の言うことを聞け」

若い英治さんは、暴力団という言葉と、上原の入れ墨に恐怖を感じ、その言葉を信じてしまう。また、それ以前に上原から借金を申し込まれていた経緯などもあり、上原と行動を共にすることを決意した。
すでに妻子がある身だった英治さんは、驚く妻を説得して妻子とともに上原と合流、そこから一年もの間、車で各地を転々とする生活を余儀なくされていた。
生活は、主に貸別荘などを借りていたが、その費用は英治さんが消費者金融から借金をするなどして都合していたという。

逃亡生活は次第に英治さん一家にとって「何のために逃げているのか」わからないものへと変わっていく。
先に述べたとおり、金銭は英治さんに借金をさせ、足りなくなると英治さんの妻にも借りさせた。
食事は一日に一度となり、幼子を抱えた妻は自分の食事をわが子に与え、一〇キロ近く痩せていたという。
そこまでして英治さん一家を縛っていたのは、暴力団に追われているという嘘と、上原からの暴力だった。

上原は体重が一二〇キロ近くある巨漢で、英治さんは日ごろから暴力を振るわれていた。
ある時からそれは特殊警棒のようなものになり、時には妻にもその暴力は向けられたという。
さらに、英治さんの一歳の子供にも、上原は自分の子供に命令し、叩く、けるなどの暴力を振るわせていた。

また、英治さん一家は常に上原の妻に監視されていた。伊東市内の貸別荘では、窓のすべてに鍵がかけられ、外から粘着テープで目張りされて開けられないように細工されていた。
用事で家族に連絡を取る際も、常にだれかがそばにいて、余計なことを言わないよう見張られていたという。
英治さん夫婦に対しては、それぞれを別の部屋で過ごさせ、お互いに「相手は子供を愛してない」などと吹き込んで疑心暗鬼にさせていた。

平成一四年六月一五日、たまたま上原とともに外出していた英治さんは、今しかないと思い隙を見て逃走する。
妻子のことは気になったが、それでも助けを求めるには逃げるしかなかった。そしてこの判断は正しかった。
伊東市内から妻の実家がある栃木県黒磯市までヒッチハイクをしながら三日かけて英治さんは戻り、そのまま黒磯署に助けを求めた。
事情を知った妻の父と警察署員らとともに、英治さんの案内で伊東市内の貸別荘へ戻り、ようやく英治さんの妻子は救出されたのだった。
発見時の妻は、殴られたような痕が多数あり、全治三週間のけがを負わされていた。

妻子を奪還した英治さんは一八日、心配をかけた母親・悦子さんと姉・美緒にも連絡した。実は英治さん家族が上原と行動を共にし始めた直後、「お前の家族も危ない」と吹き込まれていたことから、黒磯市に暮らす悦子さんと美緒に連絡して、福島の親類宅へ身を寄せるよう伝えていたからだ。
しかし、一度は電話に出た美緒だったが、その日のうちに連絡が取れなくなってしまう。

そして、伊東の貸別荘からは、上原たちの姿も消えていた。

(残り文字数:7,783文字)

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痛々しい、愛~広島・実母無理心中事件~

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平成16年2月25日

冬の空に日差しが戻ったその日、1台の車が瀬戸内の橋を渡っていた。
昨日よりも5度ほど気温も高く、海風は冷たいながらも心地よいものだった。
助手席にいる母の横顔を、男はなんどもなんども確認した。
皺が刻まれた母の顔。女手ひとつで自分たちを育ててくれた、母。

どうしてこうなってしまったのか。

使われていないフェリー用の桟橋に車を乗り入れると、男はそのまま海へとアクセルを踏んだ。 続きを読む 痛々しい、愛~広島・実母無理心中事件~